HAPPY BIRTHDAY RUBY 2020
想いは言葉にした途端、嘘っぽくなる。だから僕は本心をなるべく言葉にしないようにしている。想いは確かにあるはずなのにそれが形になった瞬間、イメージと齟齬が生まれてしまうのは不思議だ。前に進もうとしているのに見えない壁がある。それが無意識に作り出した壁と否定もできない。
じっとりと黒く濡れた松林を紺色の傘をさして歩く。ふと足元を見ると小さな青い花が咲いている。名前のわからない小花。
僕が黒澤ルビィについて考える時、大抵そのような情景が浮かぶ。植木鉢に丁寧に植えられた花より野に咲く花に美しさを感じるように、輝きとは視覚的な印象よりその生き様に呼応する。多くの場合はタイミングに依存するが時としてそれはあらゆる因果を超えて訴求する。
名前がわからなくたってその花の美しさが変わることはない。僕はその儚げで美しい小花に魅せられ、そして、少し持て余す。
僕は趣味を聞かれると少し迷ってから「旅行」と答える。趣味が旅行だなんて面白くもなんともない極めて無難な回答だが、僕はその答えが1番しっくりくる。僕は人並み以上に国内外いろんな所へ行った。時に友人と、時に1人で。旅行が嫌いな人はそんなにいないと思うが、我ながら相当な数の旅行をこなしたように思う。知らない場所へ行き、知らない景色を見るのはシンプルに楽しい。
触れて初めてわかることが沢山ある。音、匂い、風、光の差し方、時間の流れ、等々。海を越えると文化も違う。その場所にしかない特有の個性がある。そして日常の中で自分が触れた感覚がふと蘇ることがある。伊豆大島の海の見える動物園、しまなみ海道で飲んだサイダーの味、アルハンブラ宮殿の空気、ガンジス川で洗濯をする主婦。忘れることのない(あるいは忘れていたように思えても身体のどこかに刻まれている)景色があって、そんな一瞬一瞬が時折脳裏に浮かぶ。僕はそれが割と好きだったりする。
別にこれは旅行の経験に限らない。リアルで触れたものは何ものにも変えがたい自分だけの財産だ。
僕の心に住処をかまえる女の子。彼女は突然僕の目の前に現れては僕の感情を揺さぶってしまう。
僕は彼女になんと声をかければいいのだろう?この想いをどうやって伝えればいいのだろう?
わからない。
わからないけれどとりあえず、
誕生日おめでとう。
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時間かけて作った割に微妙なクオリティとなってしまったためここでひっそりと公開。