ぽけてん

オタクシグナル

海を見るだけの休日-西浦-

 

目を閉じてどこまでも透き通った海をじっと想像する。寄せては返す波、ぱりっとした空気。海以外に何もない場所で静かに過ごしたい、そう思うようになったのは僕が幾分疲れていたからかもしれない。終わることのないタスクの山を地道に切り崩す作業、残業で心身ともにすり減っていた。僕の生活ってこれでいいのだろうか?帰路の電車に揺られながら何度目かわからない自問自答を行う。

 

海を見たかった。自然に埋もれたかった。毎日毎日満員電車に乗り、汚れた空気が充満する池袋の駅前を歩き、コンクリートジャングルを憎らしく睨む。もう限界だ。だけど一体、何処へ逃げることが出来ようか?

 

 

 

 

12月某日、ラブライブサンシャイン5周年展示会に行ってきた。僕が知りうる限りではこうして原画を一挙に公開するのは初めてではなかったのだろうか。原画は往々にしてキャラクターの表情が豊かに見える。アニメでは一瞬で流れ過ぎてしまうところがひとつの画としてじっくり見られるというのもあるし、色が塗られていない分よく線が見えてアニメ絵より精細な画となっているというのもあるだろう。原画のチョイスが良かったのもあるが、どの原画もひとつひとつ見入ってしまう魅力があった。アニメを毎週楽しみに見ていた当時の感情が蘇ってくるようだった。アニメ原画だけでなく、ライブのポスターやダヴィンチに掲載されていた一枚絵の原画もあり、プロジェクトとしての軌跡を追うことができた。

展示会は4つのテーマに分かれて行われていたのだが、それぞれポエムが添えてあり、それがまた良かった(「街」-いつか飛び立つ場所、いつか帰る場所-(背景は沼津の街並み) 「絆」-目にみえないもの、あったかいもの-(背景は浦の星女学院) みたいな感じ)。ポエムと対面する度に絶叫が不可避だった。

 

この日、展示会に行った後に内浦を散歩してから帰る予定だったのだが、あまりにも展示会が良すぎたために内浦に行く時間がなくなってしまった(30分くらいで終わると思っていたのだが3時間くらいいた)。なので、沼津に行ったのに海を見ずに帰るという異例の事態が発生した。

 

ということで、海に行きたい欲が異常太郎となった僕は翌週海に行こうと心に誓った。どこの海に行くか悩んだ。内浦でもいいのだが、折角だし今までに行ったことのない場所も良いなと。

 

気がついたら僕は沼津駅にいた。いつものように魚がしで鰯の炙りを食い散らかした後、商店街のパトロールを行った。うん、今日も沼津は平和である。タリーズでコーーーーヒーーーーを飲んだ。クソガキ顔の女店員がとてもキュートで激しく興奮した。恋の危険はここにある。

 

狭く曲がりくねった道の先に西浦岬はある。運転めちゃくちゃ疲れた。西浦は海しかない、海以外に何もない、故に休息の地として最高の環境であった。ついでに沼津街歩きスタンプの西浦でコラボしているものも回収できる。まぁまぁアクセスが悪いから西浦のスタンプを回収する機会はあんまりないのだ。

 

宿は街歩きスタンプがコラボしているはまゆう荘を選んだ。

僕「チェックインお願いします」

宿の人「ラブライブかい?」

僕「いいえ、違います」オタクと思われたくなかったからとっさにこう答えた。

宿の人「そうかい、まぁ一応渡しておくよ」

 

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オタクって何故風貌だけで一瞬でオタクとわかってしまうのだろう。全く不思議である。

 

はまゆう荘は昔ながらの旅館で、客室からは海が一望できた。従業員の方も気さくで居心地の良い宿だった。

 

西浦の街歩きスタンプを回収すると、僕のスタンプ帳がついに三冊目に突入した。そう、僕は沼津街歩きスタンプのガチ勢なのである。こうしてスタンプ帳を見返すと思い出が沢山詰まっていて感慨深い。

 

街歩きスタンプがコラボしているところはやはりサンシャインのポスターやフィギュアが見られた。コラボしているとはいえ、今でもこうしてサンシャインのものを飾っていてもらえるのはファンとして素直に嬉しい。前にもブログに書いたかもしれないが、こうしてひとつの作品が街に浸透している様を見ると不思議な気分になるのだ。アニメが画面を超えて現実世界に残り続けることは、作品にとってこれ以上にない冥利だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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西浦は本当に静かで、僕が求めていた場所だった。

 

僕は飽きることなく西浦の海を眺めていた。聞こえるのは緩やかな波音だけ。歩いたり煙草を吸ったりしながらいろんなことを考えた。あるいは何も考えなかった。あきれるほど空は澄み渡っていて、海はどこまでも透明だった。幾分寒かったけれど、ずっと海を眺めていられた。海を眺めたところで僕の抱える問題が解決するわけではないが、穏やかな気持ちになれた。穏やかな気持ちになることができれば、それで十分だ。

 

西浦はダイバーの聖地というだけあってダイバーの方が沢山いた。こんな寒い中、海の中に潜っていくのは正気の沙汰とは思えなかったけど、彼らを魅せる何かが西浦の海にはあるのだろう。いつか僕もやってみるか。

 

 

夕食ははまゆう荘で食べることになっていたのだが、あほみたいに量が多かった。二人分です、と言われても通用するくらいの量で、鍋に刺身に煮つけに豪勢に並んでいた。残すのも勿体ないしどれも美味しかったので殆ど全部食べたが、食べ終わるころには胃がはち切れそうだった。はまゆう荘、人間の胃の可能性を過信している節がある。

 

 

 

 

 

 

西浦の浜辺からは沼津港や内浦を眺めることができる。僕はふと展示会のことが浮かんだ。何故か。展示会は確かにアニメを見ている当時の感情が蘇ってきたのだが、なんだかそれは対岸の景色を眺めているような気がしたのだ。当時者感が薄いというか。実際、アニメが終わってからそれなりの時間も経ったし、アニメ放映時なんてもう懐かしいくらいだ。特段その事実に思うことはないが、今もずっとサンシャインは僕の胸の内にいることは確かだ。あれから随分遠くまで来たような気もするし、ずっと足踏みをしているような気もする。それは西浦から駿河湾を隔てて沼津港や内浦を眺める感覚と似ているように思った。

 

なんにせよ、2021年も頑張ろうと思った。良い休暇でした。

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