ぽけてん

someone in the crowd

論理と感情-久石奏-

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人は何かを判断する時、論理に基づいて選択をしている、はずだ。どのような判断も論理に基づいて選択を下すことができれば良いのだが、人はめんどくさいことに感情がある。一見簡単に見える判断も感情というスパイスを加えることで突然複雑化する。それが人の面白いところでもあるし、最悪なところでもある。

 

そして往々にして論理は感情という無秩序な暴君に吹き飛ばされる。むしろ吹き飛ばされてばかりだ。

 

人は歳を重ねるうちに自然とその事実に気づく。気づいてどうするか、いろんな対処法があるだろう。

 

久石奏は厚い仮面を被った。世界への不信感からその本音を閉ざすようになった。時折見せる毒牙が世界へのせめてもの抵抗だ。

 

久美子に懐く奏、求をなじる奏、さつきを試す奏、梨々花と冗談を交わす奏、いろんな仮面、いろんな奏。どれも本物の気持ち、どれも偽物の気持ち。自分が傷つかない距離感を探す。自分の努力が報われないのならば偽ればいい。偽れば………

 

 

 

久美子は奏を"甘い"と評する。利己的なふりをしているだけ、大人のふりをしているだけ、と。久美子の奏に対する評価はやや厳しめだ。まぁ比較対象があすかだからというのもあるかもしれない。

 

あすかはあくまで利己的に行動を選択し、感情を簡単に切り捨てる。他人を酌量しない。見ているのは自分の前に伸びる道だけだ。あすかの有能なところは利己的だが独善的ではないところだろう。他人との距離感は上手に取るし、他人の心の扱い方も知っている。論理的なキャラにカテゴライズされる奏とあすか、その内情は実は大きく異なる。

 

 

 

奏は聡明だ。自身も論理的な人間であると自負はあるだろう。感情で理屈がすぐにブレる人間という生き物に酷く警戒心がある。

 

が、奏は自身の感情を切り離すことはできない。奏は夏紀の努力を見ていた。彼女の本気を。2つ下の後輩に教えを乞うほどには上手くなりたいという意志を夏紀は持っていた。そんな夏紀の本気が報われて欲しいと奏は感じていた、と思っている。

 

コンクールの際に奏が取った行動が間違っていたとは思わない。それが例え夏紀を、北宇治を冒涜する行為だったとしても。それは奏自身が悩みに悩んで出した結論だから。結果的に3人ともAに入った。しかし、夏紀が落ちて奏がAだったとしたらそれは理屈は通っても感情が納得できないだろう。人なんてそんなものだ。

 

 

 

結局、人は論理だけでは物事を判断できない。全国金賞を目指している実力主義の北宇治吹奏楽部。実際に昨年度は久方ぶりの全国出場を果たしている。そんな確かな前提の上でも人の感情は蠢いている。実力以外の物差しが屹然として存在している。それでも人は自分が納得できる答えを選ばなくてはならない。

 

 

 

夏紀を傷つけつつも夏紀の本気が報われて欲しいと思う久石奏。自分のエゴだとしても、自身の理屈がまかり通らなかったとしても、自分の感情は捨てられない。

 

 

感情という荒波に揉まれる久石奏。

 

久石奏。

 

久石奏。

 

久石奏。

 

久石奏、可愛い。

 

 

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