ぽけてん

オタクシグナル

津島善子「ガンジス」④

津島善子「ガンジス」③ - ぽけてん

 

↑の続き

 

 

津島善子

 

 

 

「よ、善子ちゃん!?」

 

ヨハネよ!」

 

2億4000万回目のやりとりである。

 

「こんなところで何してるずら?」

 

「ずら丸を追いかけてきたに決まってるじゃない!」

 

そう、私はずら丸を追いかけてここまで来た。何故か。それは

 

 

ずら丸は大切な友達だ。けれど、友達を思う以上の"何か"が私の心の中には存在した。その"何か"はとてもいけないもののように感じる。見ないようにしていた、考えないようにしていた。その存在を認知してしまうと後戻りできない気がしたからだ。でも、無理だった。それは日に日に大きくなり、私は苦しくなっていった。そう苦しいのだ。決して甘美なものではない。苦しく、心の中がぐちゃぐちゃになる。そろそろ認めなくてはいけないだろう。この"何か"の正体は

 

川沿いにふたつ並んだ影法師。キラキラと川面は輝き、世界は赤く染め上がる。

 

「あんなことして、ごめん」

 

掠れるような声で私は呟いた。

 

「あんなことってなんのことずら?」

 

ずら丸とは付き合いは長い。ずら丸が仮面を被っていることくらいはすぐにわかる。

 

「キス、しちゃったじゃない、お酒の勢いで

 

「あぁ……あのことずらか。マルは気にしてないずらよ。」

 

「でも、あんたは急にインドに行っちゃうし、びっくりした追いかけなきゃって思ったし、ずっと謝りたかった

 

「善子ちゃんは気にしすぎずら。」

 

 

自分らしく、自分に正直でいる。私がスクールアイドルの活動で学んだ大事なことだ。今、私は悩んでいる。私の心の中に潜むこの"何か"は恐らく普通ではない。普通とは何か、という話をすると長くはなるがつまりは一般的ではないのだ。それを肯定して良いのか。そして、ずら丸に押しつけて良いのか。良いか悪いかで言えば、多分、心の中に秘めたままの方が吉なのだろう。けれど、私は

 

「私はね、禁断の果実に触れようとしているの。一度触れたら戻ることは難しい。それは花園と例えられるけどそこまでの道は茨の道。」

 

「き、急になんの話ずら

 

「酔っ払っていたとはいえ私は酷いことをしたと思うわ。そのことは本当に申し訳ないと思ってる。でもね、」

 

ずら丸の瞳を見据える。その瞳の深さに一瞬溺れそうになる。意を決するのよ、ヨハネ

 

「花丸。私は………………………

 

 

私は知らなかった。恋とは苦しいものである。世間一般のきらびやかなイメージとは一変、想像以上の重さがそこにはあった。でも、実は甘美な蜜は遠いようで近かったりもする。

 

 

 

 

 

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とあるインド人の話

 

「凄い可愛い女の子2人が手を繋いで歩いていたんだよ!もうあれは2人だけの世界が完成されていたね!眩しすぎて直視できないくらいだったよ!世界の終わりを告げる使徒が地球に降り立ったとしたら多分あの2人のようなオーラを纏ってるんだろうね!ひっっっひゃっほぅぅぅ!!」

 

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「でも、お酒の勢いで接吻するなんて最悪ずら」

 

「だから、ごめんって言ってるじゃない!!」

 

 

 

 

 

 

お酒から始まる恋だってあると思います。

 

 

[後語り]

 

大学の卒業旅行でインドに行ったんですよ。2週間くらい滞在してました。それはもう日々刺激的で非日常の連続でした。ただ困ったことに食べ物が身体に合わず、滞在中殆ど下痢をしていました。私がタージマハルのトイレで下痢をしている頃、日本ではAqoursファンミ千秋楽が行われていたそうです。私が腹痛で顔をしかめながらガンジス川を眺めている頃、日本では私が4年間過ごした大学の卒業式が行われていたそうです。「日本に帰りたい」が口癖になってたりしてないですよ、、、え?まぁとにかくインドでの日々で感じた色んなものを本作に取り入れたつもりです。