ぽけてん

オタクシグナル

津島善子「ガンジス」③

津島善子「ガンジス」② - ぽけてん

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津島善子] 

酷い目に遭った。

 

ATMでお金を下ろそうとしたらそのATMには現金が入っていないと言われ、裏路地に入ったら野良犬に何故か追いかけられ、日本語堪能なインド人に高級シルクのスカーフを買わされそうになったりと、ドタバタの一日だった。へとへとになりながらガンジス川沿いの宿に着いた頃には既にあたりは暗くなっていた。

 

お金の心配もあったから安めの宿に泊まったらシャワーからお湯が出なくて修行僧のような風呂となってしまった。

 

「これも美しすぎる堕天使が故の運命

 

そう台詞を残し私は深い眠りについた。

 

 

ラブライブ優勝してから1週間後くらいのことだった。放課後になり、私は中庭の自動販売機で飲み物を買ってから部室に向かおうとしていた。中庭の私のいるところからちょうど対角線上に果南がいるのが見えた。声をかけても良かったがどうせ部室で会うからそのまま去ろうとしたが、ふと気になりもう一度果南の方に視線を向けた。果南は誰かに話しかけられていた。あ、と思った。あれは告白だ。確証はない。けれどなんとなくわかる。女子校では"そういうの"もある、と聞いたことがあった。しかし実際に見るのは初めてだったし、まさか知り合いが

 

初めて見たのはその時だったがそれ以降も"そういうの"を見たり聞いたりは何度かあった。高校三年生の頃、私も2回ほど女の子に告白された。元々恋愛方面には疎い方であったが、"そういうもの"の存在は私の胸の中に確かに残っていた。

 

 

朝になり、私はずら丸の捜索を始めた。川辺に降り、川上の方に向かって歩き出す。インドではクリケットが人気だ。テレビのチャンネルを回すと大体クリケットのニュースがやっている。ガンジス川沿いでもその人気は衰えるとこを知らず、子供達がクリケットをやっていた。何度もボールを川に落としていたし、なんでこんな不便そうなところでやっているのだろう

 

 

 

人を好きになる、という気持ちが私にはいまいちわからない。20年余りの人生を送ってきてまともな恋愛をしてこなかった。我ながら驚きだ。でも、堕天使に恋は似合わない。例え誰かが私に堕天することはあっても、逆はありえない。堕天使とはそういう運命の星の元に生まれてきている。

 

 

 

日が上がって暑くなってきた。屋台でよくわからない食べ物を買い、日陰で食べた。インドの屋台の食べ物はとりあえず辛い。私は辛いものが好きだから良いが、ルビィがインドに来てしまったら何も食べられなくなってしまうだろう。

 

 

 

ずら丸は上級リトルデーモンだ。高校時代、激動の日々を共にした眷属であり、同士であり、大切な友達だ。私達は別々の大学に進学した。会う頻度はもちろん減ったがそれでもずら丸とルビィと私の3人はよく集まった。

 

いつからだろうか。生活の中でふとずら丸を思い出す機会が多くなった。美味しいケーキを食べた時、面白い本を見つけた時、綺麗な夕日を眺めた時、ふと想起される女の子がいる。隣に彼女がいないことに違和感を感じてしまう自分がいるのだ。

 

 

 

かなり上流の方まで歩いてきた。周りには殆ど観光客はいない。いるのは川を見ながら呆然としている現地人と牛と私だ。風が吹く。川面に細波が広がり、私の髪を揺らす。

 

 

あぁ………

 

 

私は川辺で文庫本を読んでいる女の子を見つけた。